何ヘクタールもの土地を、センチメートルの精度で整地する。「ICT×ブルドーザー」に、驚いたのは現場だった。

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何ヘクタールもの土地を、センチメートルの精度で整地する。
「ICT×ブルドーザー」に、驚いたのは現場だった。

「想像以上だったよ」。それが、現場監督の第一声だった。傍らでは、熟練のオペレーターが、よく日焼けした顔で、うなずいている。山口県山陽小野田市。宇部空港から30分ほどクルマを走らせた場所に、その現場はあった。6haの広大な土地を整地してつくるメガソーラー建設予定地。日照時間が長く、条件のいいこの地域には、ソーラーパネルを敷きつめ太陽光発電をするメガソーラーが増えている、と教えてくれた。

二人の視線の先に、一台のコマツがいた。ICTブルドーザーD61PXi。見た目は、普通のブルドーザーと変わらない。しかし、この新しいコマツが、現場の働き方を大きく変えようとしている。最大の特徴は、ICT技術を駆使し、世界で初めて掘削から仕上げの整地までのブレード操作を自動化したことにある。ブレードとは、土を押すブルドーザーの手にあたる部分のことだ。

ちょっと想像をしてほしい。あなたが、この現場で作業をしている姿を。まず、設計図を、通信で読み込ませる。どこを何cm掘削するのか。斜面の勾配は、何度にするのか。運転席に座ったあなたは、ブルドーザーを前後左右に動かすだけでいい。あとは衛星を使った位置情報システム(GPS・GLONASS)とブレード制御システムが、自動で仕事をしてくれる。ブレードが、ぐいっと土を押しこんでいく。その負荷までも機械自身が感知しながら、自動制御していく。運転席のモニターに目をやると、作業状況がリアルタイムで映し出されている。そのデータは、現場から遠く離れたオフィスにいる人も、インターネットで確認することができる。現場の写真を、もう一度、見ていただきたい。整地面の美しさに、気づいてもらえるだろうか。「センチメートル単位の精度で、仕上げてくれる。仕事が、楽になったよ」。そう語るオペレーターの声に、実感がこもっていた。

このブルドーザーがやって来て、現場は、大きく変わった。作業工程も、作業時間も、関わる人の数も。現場の働き方にイノベーションを起こした、と言うのは言い過ぎだろうか。普通の現場なら、まず測量からはじめる。二人の技師が測り、杭打ちを行う。その目印に合わせて、掘削や盛土をしていく。しかし、このブルドーザーの場合、わずかな測量だけでいい。また世の中が忙しくなれば、現場の人手は不足する。熟練オペレーターの高齢化も心配される。そんな現場の課題も、自動で働く建設機械が増えれば、明るい方向に進んでいくにちがいない。オペレーターの腕に左右されることなく、短期間で、精度の高い仕事ができるのだ。

広大な現場で、一台のコマツが、黙々と土をならしていた。遠くから見れば、ごく普通の作業風景。しかしそこには、現場で働く人たちと建設機械の新しい関係がはじまっていた。「想像以上だったよ」。現場監督が、同じ言葉をつぶやいた。ICT建設機械への、何よりうれしい言葉だった。

日本経済新聞   2014年06月17日 (火)

読売新聞   2014年06月17日 (火)

北國新聞   2014年06月17日 (火)